看護師は、転職や結婚出産を期に仕事を辞め、再就職する人が多い世界です。
看護協会の報告する離職率では、
正規雇用看護職員:11.5%
新卒採用者:8.6%
と、毎年2割近い看護師が退職しています。
厚生労働省の調査でも、54.8%以上の看護師は1回以上退職した経験があり、
1年以内に49.8%
1〜3年未満に13.2%
の人が再就職をしているそうです。
転職は他人事ではなく、多くの人が経験することなのがわかります。
転職(再就職)するためには、履歴書に加え、職務経歴書で
- 自分はどんな看護師なのか
- 看護技術はどれだけ習得しているのか
- 病棟内でどのような役割をこなしてきたのか
- 病院内でどのような役割をこなしてきたのか
など、自分の経歴を伝える必要があります。
しかし、仕事を振り返ってみると、頑張った記憶はあるけど、何を頑張ったのか説明できない、仕事の成果を言語化できない人は多いはず。
この記事は、自分が経験してきたキャリアを振り返るための手段(棚卸し方法)をお伝えします。
キャリアの棚卸しができると、自分の努力を言語化でき、客観的な情報で表現できるようになります。
転職しなくても、キャリアの棚卸しをすることで、自分の得意分野がわかったり、好きな仕事を明確になるので、仕事をより楽しむきっかけになります。

看護師のキャリアの棚卸とは?

キャリアの棚卸しとは「自分の経歴を振り返って、経験を明確にすること」です。
看護師になってから得た経験や技術を、振り返って具体的に書き出します。
そうすることで、今の自分を正確に把握して、できること、得意分野、キャリアプランを考えることができます。
1〜2年目
目の前の仕事を覚えることに必死で、あっという間に時間が過ぎる
3年目
プリセプターや病棟の役割を任せれることが増えてくる
5年目以降
リーダーをやったり、病棟の重要な役割を任される
たくさんの役割を任されたはずだけど、振り返ると一言二言でしか説明できないものばかりではありませんか?
意外と、やりきった満足感に包まれるばかりで、実際何をどれだけやったか説明できないものです。


看護師歴2年目でも、病院や配属先が異なれば、経験も違います。
看護技術一つとっても、新人時代から考えれば必ず成長しています。
その成長を振り返って、具体的に書き出すことがキャリアの棚卸しに重要なことです。
看護師がキャリアの棚卸しをするべき理由

キャリアの棚卸しをするべき理由
- 自分の成長を把握できる
- 足りない部分を把握できる
- 得意分野を把握できる
- 自分に向いている転職先がわかる
- 転職のときに、自分の価値を明確に提示できる
棚卸しで自己分析がうまくできないと、転職で失敗しやすくなります。
心して取り組んでください。
参考 看護師転職の失敗パターン7選!失敗する人に共通する特徴を紹介
自分の成長を把握できる
看護師は自分の成長を把握しにくい職業です。
周りの看護師と比べてしまうため、自分のできないところばかり目がいきます。
そんなできない自分を責めて、ネガティブになっていく人がとても多いです。
しかし、毎日業務をこなしていれば必ず成長はしています。
例えば、2年目看護師がキャリアの棚卸しをすれば
- 受け持てる患者が0人から8人へ増えた
- 採血ができなかったが、10人程度の採血なら朝のラウンドで終わる
- 検査だし、検査受けができるようになった
- チームメンバーとコミュニケーションを取れるようになった
など、たくさんのできることが見えてきます。
成長していることを実感できるので、やる気がでます。
足りない部分を把握できる
看護師はできないことばかりの自分を責めて、不安になっている人が多い割に、「何ができていないのか」「なぜできないのか」を把握している人はとても少ないです。
自分のできていないことを明確にすることができれば、漠然とした不安が解消され、前向きに取り組むことができるようになります。
例えば
「先輩は残業してないのに、私は残業してばかり。私は仕事ができないんだ」
と落ち込んでいるAさんがいます。
Aさんは残業ばかりしている自分は仕事ができないと落ち込んでいますが、なぜ残業が多いのかを考えることができていません。
まさに漠然と不安になっている状態です。
キャリアの棚卸しをすることで
採血はできるけど、準備に時間がかかり、トータルで15分かかっている
ことがわかりました。
先輩はトータル5分で終わらせることができるなら、10分も無駄に時間を使っていることになります。
しかし、10分の積み重ねが残業の多い理由とわかれば、Aさんの足りない部分は明確です。
『看護技術の準備から過程を見直し、無駄な時間をなくす』
Aさんは足りない部分を明確にして、成長することができました。
とても小さなことかもしれませんが、この小さな問題を解決することが成長の鍵です。
得意分野を把握できる
キャリアの棚卸しをしていると、得意分野がわかります。
- 人を育てることが得意
- チームワークを重視した取り組みが得意
- 個人で取り組む仕事が得意
- 業務改善が得意
など、自分のこれまでの取り組みで、ある程度の偏りが出てきたり、振り返ってみれば


などがわかります。
これがあなたの強みになります。
この強みを把握することで、これからの仕事に活かすことができます。
自分に向いている職場環境がわかる
キャリアの棚卸しでわかった自分の成長や、得意分野(自分の強み)をさらに活かすことを考えましょう。
自分の強みを活かした仕事が今の職場でできるのか、転職して新たな環境で活かすべきなのか、しっかり考えることができます。
自分の強みを活かした仕事は、楽しいばかりでなく、キャリアアップにも繋がるとても重要なことです。
長い仕事人生、今の職場にこだわらず、自分の働きやすい職場を検討する良いきっかけになります。
転職のときに自分の価値を明確にできる
自分の強みを活かす環境を求めて転職するとき、キャリアの棚卸しで把握できたことはとても役に立ちます。
特に職務経歴書を書くときには欠かせません。
実際にやってきた経験や得意分野、苦手分野を説明できるようにしておけば、説得力がでます。
具体的に書くことで、あなたの経歴がしっかり伝わり、あなたの価値が上がります。
自分のやりたいことをはっきりさせておけば、転職後の仕事のイメージもつきやすくミスマッチの転職を防ぐ効果もあります。
転職活動の方法は『看護師転職の流れを10ステップで紹介|具体的な方法を準備から解説 』をご参照ください。
キャリアの棚卸しで、自分の強み、具体的な経歴がわかれば、キャリアプランも立てやすい
看護師のキャリアの棚卸し方法を解説



キャリアの棚卸しは、本来なら
- これまで行った業務
- 業務に取り組んだ姿勢
- どんな結果を出せたか(数値)
- やりがいはどうだったか
など、一つ一つ分析していく必要があります。
こんなの気楽にできませんよね。
私のオススメする棚卸しの仕方はとてもシンプル
とにかく経験したものを書き出すだけ!
棚にしまったプリントや、USBのデータ、メールなどを見返して書き出すだけ
難しいことを考える必要はありません。
これまで溜め込んだ、プリントや資料、メールやLINEを見返してみましょう。
書き出すもの
- 経験した病棟や科目
- 毎日行っている業務
(受け持ち人数、採血、検査だし、手術受けなど) - 経験した委員会
- 委員会での取り組み
- スタッフに伝達したこと
- 病棟で任されたこと
- 任されて実施したこと
などを書き出してください。
もし、数字で評価しているものがあれば、その数字は必須です。
病棟の取り組みや、自分の年間目標は数値評価が多いと思います。
それらは、立派な客観的に評価できる実績です。
小さなことも書き出すことで、自分の知らない自分の成長や得意分野が見えてきます。
看護師のキャリアで特に重要な項目
看護師は『経験した科目、同じ部署に何年いたか、医療機器(呼吸器や輸液ポンプの経験)』など、看護技術に関わる経験が重要視されると考えがちです。
しかし、管理者や採用担当者はもう少し違う視点から見ます。
管理者や採用担当者の視点
- 経験した委員会
- チームリーダーの経験
- 看護研究の経験
です。
経験した委員会
委員会から推測される看護師の印象
教育委員
管理者から信頼され、人間性が優れている
感染委員
感染対策について正しい知識を持っている
医療安全
問題が発生したとき、同じ問題が発生しないよう対策を考えられる
褥瘡委員
適切なポジショニング、除圧や摩擦について理解している
など、経験した委員会で看護師に期待するものが変わってきます。
特にこの4つは、看護業務の中でとても重要な要素で、どこの施設にいっても普遍的なものです。
経験していると信頼でき、仕事を任せやすくなります。
委員会で行った取り組みも書き出しておきましょう。
参考 看護師の委員会活動は面倒?キャリアアップできるチャンスを逃がすな!
チームリーダーの経験
チームリーダーを経験することで、マネジメント能力が磨かれます。
看護師は看護業務にこだわりますが、管理者からみると、
- 看護師をまとめる力
- 目標達成させる力
のある看護師を重宝します。
チーム活動で何か成果を残していれば、必ず書き出しておきましょう。
看護研究
看護研究は、みんながやりたがらない仕事です。
しかし、研究テーマを掲げ、文献を検索し根拠をたて、論理的にまとめる過程は看護師の質を向上させます。
看護研究の実績がなければラダーをクリアできない病院もあるほどです。
経験があるなら、研究テーマや結論まで説明できるようにしておきましょう。
【事例】看護師がキャリアの棚卸しをした結果、わかったこと

では、私自信の棚卸し結果を公表したいと思います。
新人看護師の棚卸し方法は先に書いているので、今回は私の主任時代の棚卸しをします。
実際、棚卸しをしたら「こんな仕事が好きなんだな」と気づくことができました。
振り返り期間は2年前からです。
2年前くらいなら覚えていることも多いと思ったのですが大間違いでした。
主任業務の棚卸し
棚卸し前の私の振り返り
- 主任としてモデルナースになれるよう意識して行動した
- 管理者と連携してICUを運営した
これでは、努力した思いは伝わってくるけど、実際何をしたのかよくわかりませんよね。
キャリアの棚卸し後
- 病棟マニュアル改定
病棟マニュアルを修正・作成するため、スタッフへ割り振りフォロー、校閲した - ICUステップアップマニュアルを作成し、評価方法を明確にした
- 急変時対応フローシートを作成し、統一した対応を取れるようにした
- 疾患別看護基準作成のため、主任会で代表となり指揮をとった
(主任への担当割り振り、最終チェック)
このようになりました。
キャリアの棚卸し前後では、私の経歴のわかりやすさが段違いです。

私自身、1年でここまでやってきたんだなと感心しました
このキャリアの棚卸しでわかったのは
- マニュアルや基準など、仕事の基になるものを作成するのが得意
- 他者へ依頼し調整するなどマネジメントするのが好き
ということです。
仕事を振り返っていると、「この仕事は大変だったけど楽しかったな」など、感情も思い出し、今後のキャリアアップを本気で考える切っ掛けになりました。

転職する前に棚卸しをしておけば、転職後に後悔しなかったのにと反省しました
私の転職で後悔した経験は『看護師が転職で後悔しないために|実際の経験からわかったやるべきこと』で紹介しています。
看護師キャリアの棚卸|まとめ

キャリアの棚卸しをすることで
- 自分の成長を把握できる
- 足りない部分を把握できる
- 得意分野を把握できる
- 自分に向いている転職先がわかる
- 転職のときに、自分の価値を明確に提示できる
ことがわかりました。
私も自分のキャリアの棚卸しを基に転職して、新規立ち上げの職場で働いています。
新規立ち上げの施設を経験は、私のキャリアをさらに豊かにしてくれています。
看護師もキャリアを積み重ねて活躍していく時代です。
キャリアの棚卸しを通して、自分を振り返り、活躍できる場を求めていきましょう!